Home > 日本精神科看護協会とは > 会長の挨拶
第44回日本精神科看護学術集会初日に開催された定時総会において、若輩者ながら会長職を拝命いたしました。今日までの職能団体の伝統と、末安前会長の後を引き継ぐという立場に、責任の重さを痛感しています。
これまで諸先輩方のご指導を賜りながら、理事として教育認定委員長、副会長などの役割を担ってまいりました。今後は、精神科看護に対する諸先輩方の熱意と探求心を継承し、これからの時代に求められる精神科看護のあり方を考え、ともに築いてきた協会事業・活動のさらなる発展に向けて職責を果たしてまいります。何卒一層のご指導ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。
私は、岡山市内の精神科病院で働きながら准看護師、看護師の資格を取得しました。看護職の資格を取得し、日本精神科看護協会の会員となったことで、精神科医療・看護について勉強する機会を得るとともに、全国の精神科病院で活躍する仲間と知り合い、多くの刺激を受けることができました。そして、精神科看護師として、人生の中で目標となる先輩との出逢いに恵まれました。私と同じように、日本精神科看護協会とともに歩んできた会員も多いことと思います。
今後は、日本精神科看護協会の「こころの健康を通して、だれもが安心して暮らせる社会をつくります」の理念に基づき、精神科看護者の視野をさらに拡大して、さまざまな活動を創造していきたいと考えています。そして地域包括ケアシステム時代としては、精神科病院と地域との関係に目を向けて、精神科看護者が地域住民にとっても身近な存在となることができるように、全国の会員と一緒に新たな活動を考えチャレンジしていきたいと考えています。
そのために、新体制の代表理事、理事、監事、そして都道府県支部と力を合わせ、会員の皆様と社会の期待に応えていきたいと思いますので、今後ともご理解ご支援のほどを心からお願い申し上げます。
一般社団法人日本精神科看護協会会長
吉川 隆博
新しい年を迎えるにあたり、謹んでごあいさつを申し上げます。
昨年は、自然災害が多かった1年でした。6月の大阪府北部地震、7月の西日本豪雨、9月の北海道胆振東部地震、そして何度も日本を直撃した大型台風など、大きな被害が広域に及びました。被害に遭われた方々にとりまして、今年がよい1年になりますようにお祈りいたします。
協会事業について振り返れば、昨年はいくつかの新しい事業に取り組んだ年でした。その1つが、福島県から受託した県外避難者心のケア訪問事業です。この事業は、東日本大震災や東京電力福島第一原子力発電所の事故によって、福島県から県外に避難した方々を精神科看護者が訪問し、メンタルヘルスの不調に関する相談を受け必要に応じて医療サービスなどにつなぐものです。震災発生から8年が経過しようとする今、被災者の状況は二極分化しているといいます。特に全国に避難している方々の中には、深刻な状況に陥っている方が少なからずいらっしゃるということでした。
この事業の一環で、県外避難者の支援をしている事業所を訪問したところ「専門家が仲間に入ってくれるのはありがたい。特に、メンタルヘルスの専門家なので心強い」と、どこの事業所でも言ってくださいました。ほかにも、昨年7月の西日本豪雨の災害に対して愛媛県支部が取り組んでいる「被災地こころの保健室活動」も含め、私たちが磨いてきた専門性が役立つ事業に、皆さんと一緒に取り組めることをうれしく思っています。日精看がこれまで蓄積してきた精神科看護の知見が医療の枠を飛び出し、社会に大きく貢献することになります。私たち精神科看護者が新たな役割を果たせるようにがんばりたいと考えています。
日精看は新しいスタートを切る予定です。次の世代の人たちにも、さまざまなことにチャレンジしつつ、精神科看護の探究を続けてほしいと思っています。
一般社団法人日本精神科看護協会会長
末安 民生
新しい年を迎えるにあたり、謹んでご挨拶を申し上げます。
昨年は、わが国の将来の命運がかかるような政治的な変化のあった一年でした。精神保健福祉法の改正案も衆議院解散で廃案となりました。今後、協会は改正法案の作成に意見を述べ、法改正の過程にも関与し、精神障がい者の療養と地域生活がよりよくなるために努力をしていきたいと思います。
一方、足元に目を向ければ、隔離・身体拘束件数の増加が精神科医療の現場で大きな問題として取り上げられています。その背景にはさまざまな要因がありますが、特に身体拘束は患者に苦痛を与えるだけでなく、回復の遅れにつながるという研究報告もなされています。そこで身体拘束は医療・介護施設における極めて重要な課題であると認識し、平成30年度の協会活動方針の一つに「身体拘束に頼らない患者の安全を守るケアを行う」を掲げ、会員の皆様と一緒に効果的なケアを共有し、ケアの視点と方法の転換をめざしていきたいと考えています。
ここ数年、精神科看護の専門的技術を一般病院や保健の現場で働く方々に提供し、活用していただく機会が増えました。精神科看護者による実践的な講義がおもしろいと、日精看の研修会や学術集会への他職種や精神科以外の領域で働く専門職の参加が増えています。このように、診療科を越えた看護者のネットワークが広がることで、精神科以外での取り組みを私たちが活用することもできます。精神科看護の経験や技が交流することで、看護の質の向上を図りたいと思います。
今年も、全国の会員の皆様と精神科看護を語り合い、高めていく一年にしたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
また、皆様にとっても良き一年になることを心より願っています。
一般社団法人日本精神科看護協会会長
末安 民生
新しい年を迎えるにあたり、謹んでごあいさつを申し上げます。
昨年は、心痛む出来事が少なくありませんでした。その一つは、熊本と鳥取の地震、台風10号による岩手県などでの集中豪雨など自然災害が相次いだことです。被害に遭われた方々にとりまして、今年がよい1年になりますようにお祈りいたします。
そして、相模原市の障がい者支援施設の事件は社会に衝撃を与えました。被疑者の障がい者に対する攻撃性もさることながら、被疑者が措置入院をしていたことが報道され、精神障がい者への偏見が強まることに危惧を覚えました。この事件に対して厚生労働省は「相模原市の障害者支援施設における事件の検証及び再発防止策検討チーム」を発足させ、9月に中間とりまとめが発表されました。それに対して11月に日本弁護士連合会から会長声明が出されました。声明では、差別や偏見のない共生社会の実現に向けた提案を検討チームの使命としたことを評価する一方、実際には措置入院のあり方の検討に終始したと指摘していました。私も同様に感じていたので印象に残りました。事件が起きてから、「被疑者はなぜあれほど強い差別意識をもったのか」「成長の過程で被疑者の誤った考えを修正する機会はなかったのか」そのことを考えていました。
昨年から障害者差別解消法が施行されましたが、わが国における精神障がい者への偏見は根強く、即効性のある対策はありません。しかし、精神障害の方々の回復に向けてがんばる姿を知る私たちが精神疾患の正しい知識を普及し、精神障がい者の社会参画を後押しすることは、たとえ時間がかかっても偏見の解消につながると私は信じています。誰もが安心して暮らせる社会の実現に向けて、精神科看護者だからできることに今年も取り組んでいきたいと思っています。
みなさまにとってもよき一年になることを願っています。
一般社団法人日本精神科看護協会会長
末安 民生
12月を迎え、新年の足音が近づいてきました。この機会に、2016年を振り返りながら、今年の日精看が取り組んできた活動をお伝えします。
熊本地震の被災者支援活動―人のつながりを活かした機動力ある支援
4月に発生した熊本地震では、協会役員の山本副会長、内野理事、早川業務執行理事を中心にした活動を展開しました。地震発生直後には、被災した益城病院に食料と飲料水を届けました。また、熊本県支部と熊本県精神科協会をとおして松田病院からの要望を受けた後には、日精看登録の災害ボランティアナースを中心に19名を派遣しました。早期に宿泊場所が確保できたことで、機動力のある支援が実現しました。被災された側も遠慮なく支援を求めることができ、協会も日ごろの他団体とのつながりを通じて支援体制を整えることができました。東日本大震災などにおける支援活動の積み重ねが大きいと感じました。
相模原障がい者施設殺傷事件―本人の意思を大切にする
7月に起きた施設入所者の殺傷事件は、自分がどのように考え行動することが適切なのか、いまでも怒りと悲嘆の入り混じった気持ちで問い続けています。ただ、精神科病院に入院する32万人余の人だけでなく、11万人余の施設入所している知的障害の人々に向けられる視線がどのように変化するのか。現代にともに生きている私たちが何をどのように考えていくべきなのかが問われていることだけは確かだと思います。
障害者差別解消法が制定されてもなお、亡くなった方全員が匿名でしか報じられない事実からは、わが国において障害の有る無しにかかわらず人々がどのように助けあって生きているかを考えさせられます。精神科医療においても、医療保護入院など非自発的な処遇に置かれようとしている人の同意や、自発的に意思表明できない人の意思をどのように確認していくかについて、形式的でなおざりになっていないか、あらためて考えていかなければいけないと痛感しています。
新たなチャレンジ―当事者と社会をつなぐ
今年は当事者の表現を見つけて全国に発信する新たな活動として、アート写真コンテストを実施しました。6月2日に首相官邸で開催されたイベントでは受賞作品が展示されました。当日は当事者も招かれ、安倍総理大臣と懇談する機会もありました。看護者は当事者の一番近くにいる存在だからこそさまざまな自己表現を支え、能力を発掘し、広く発信する役割を果たせることを、あらためて感じました。これからも当事者の力が広く社会の目に触れる機会を積極的につくっていきたいと思います。
世界の虐待防止の取り組みに学ぶ―精神科看護者の新たな役割
諸外国においては、虐待の有無が精神障がい者の発病の要因の1つとして考えられ、診断基準にも含まれます。日本では入院時に虐待について積極的に情報収集することはほとんどありません。また、先進諸国では虐待防止センターの活動などに普段から看護者がかかわっていますが、日本ではほとんどかかわりがありません。いま日本では年間50人もの子どもが虐待死し、10万件以上もの通報があります。私たち看護者も虐待防止や虐待後のケアにおいてもっと役割を担わなくてはならないと考えています。
そこで、今年、フィンランド全域で虐待防止活動に取り組んでいる精神科看護師のピリヨ・コトカモ氏を日本に招き、全国3か所での講演会を実施しました。フィンランドの虐待防止の特徴は、虐待する父親に治療的な介入を行っていることです。私たちもこのような活動に学んでいかなければならないと考えています。
来年に向けて―歴史から学び未来を見据える
精神科看護者は、患者さんが回復したときは「患者さんががんばったからだ」ととらえ、控えめに黒子としての役割を果たしていることが多いと感じます。しかし、看護者は多様なアセスメントの視点でケアに取り組んでいますから、病院の多職種チーム、地域の多機関によるチームのなかで、より積極的、意識的にリーダーシップを発揮してほしいと思います。
高齢者人口がピークに達する2025年以降には、人と人とのつながりや地域、社会は想像もつかないような変化に見舞われるでしょう。私たちはそのような将来をも視野に入れつつ、来年には何から取り組むのかを考えていかなければなりません。私はフィンランドに出向いてオープンダイアローグを学び、伝えていますが、私たちの先輩方から学んできた手法と近いところもあると感じています。時代がどう変わっても、私たちは先輩方のケアを引き継ぎながら、どうしたら看護者として人の役に立つのかを考えていかなければなりません。日精看では来年も、積み上げてきた経験のうえに、仲間でお互いの取り組みを伝えあい、広く社会へも発信して、精神科看護の役割や存在感を高めていきたいと思います。
一般社団法人日本精神科看護協会会長
末安 民生
新しい年を迎えるにあたり、謹んでごあいさつを申し上げます。
昨年は、全国の会員の皆さんのご意見をお聞きして、協会理念を策定しました。「こころの健康を通して、だれもが安心して暮らせる社会をつくります。」―シンプルで、わかりやすくて覚えやすいという声をたくさんいただきました。また、短い文章の中に、精神疾患をもつ患者さんだけでなく、幅広い人々に対して精神科看護者が果たすべき使命が込められていて責任を感じるという声も聞かれました。
今年から、この理念を実現するための取り組みを始めていかなければなりません。その取り組みとは、精神科看護の質の向上、相互交流による自己研鑽、精神障がい者の自立支援、正しい知識の普及啓発、変革を進める政策提言です。
まずは、私たち精神科看護者の実践力を高めなければなりません。「たとえ、精神疾患にかかったとしても精神科看護者がいるから心配しなくていい」と思ってもらえるようにしなければなりません。昨年は残念なことに、精神科医療現場における暴力が問題として取り上げられることがありました。その事実から目を背けることなく、全国の会員の皆さんが考える場をつくりたいと考えています。また、患者さんの回復を促し生活を支援する私たちが精神科看護の魅力を見出し、それを共有してエンパワーする機会もつくっていきたいと思います。
これらの目標やチャレンジは、日精看が引っ張って進めていくものではありません。会員の皆さんにもチャレンジしていただくことが必要なのです。今年も、皆さんと一緒に精神科看護を楽しみたいと思います。
一般社団法人日本精神科看護協会会長
末安 民生
今年も終わりに近づき、来年に向けて総括する段階に入りました。今年、日精看が取り組んできたことを振り返りたいと思います。
協会理念の策定
今年、日精看は協会理念「こころの健康を通して、だれもが安心して暮らせる社会をつくります」を策定しました。
人は、病気でないときは自分の健康状態を意識していません。しかし、たとえば眠れなくてイライラしたときに健康状態が悪いことに気づいて医療にかかる。そのとき初めて「病院があってよかった」と感じます。精神科医療に関しては、昨年、厚生労働省から精神科病院の構造改革が出され、病院のあり方が見直されました。その方向性の上に立ち、私は「病院があるから安心だ」と感じてもらえるようになることが、私たちにとってこれからの大きなテーマだと考えています。
学術集会の活性化―自分たちの取り組みを振り返り、再評価する
昨年の学術集会から、業務改善発表を始めました。自分たちがふだん行っている取り組みを振り返り、その意味や意義を自分たちの言葉で創り出し見出すことで再評価を行うことは、ケアの質を向上させます。今年の学術集会でも、たくさんの業務改善の取り組みやケアの工夫が発表されました。日精看ではその手ごたえを感じています。そこで、来年以降の学術集会では、業務改善に加えて日ごろの看護の「実践報告」という枠組みを設けることを決めました。
「解決の鍵」は現場にあります。自分の病院では行っていないけれどもほかの病院で行っていること、ある病院では通用してもほかの病院では通用しない方法もあります。私たちが個々に行っていることが共有化されることで、気づいていないことが見えてきます。
理念を実現するために個々が何をしていくか。それを問うことがこれからの課題になります。精神科看護の技術を言語化していく。それも日精看の職能団体としての大切な仕事だと考えています。また、自分たちがもつ技術を用いて理念をどのように具体化させるか、こころの日やこころの健康出前講座で何ができるかを考えていきたいと思います。
他領域から吸収する
今年は、介護やその経営に携わる「介護男子」や、強度行動障害のケアに携わる福祉職の本が出版されました。自分たちの実践を伝えたり、スキルアップへの取り組みを形にしていることが印象的です。高齢者や強度行動障害を対象にした専門職とのケアの共有化も必要だと思います。こうした他領域の方たちの経験を吸収し、私たちができることに取り組んでいきたいと考えています。
水中毒裁判福岡高裁判決に対する理事会声明
今年5月に下された水中毒裁判福岡高裁判決に対し、6月に理事会声明文を発表しました。私たちは患者さんの意思を尊重しながら治療に向けてともに取り組み、その一方で事故を起こさないために必要不可欠な配慮も遂行しています。その判断は間違っていないということを、当事者として伝えたのです。このように、自分たちが行っている仕事を自分たちの価値判断をもって自分たちに問い、確認して社会に発信した取り組みでした。
よりよい精神科看護の実践のために
昨年、精神保健福祉法が改正され、「良質かつ適切な精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針」が示されました。これは、入院医療中心から地域生活を支える精神科医療の実現に向けて、精神保健医療福祉のすべての関係者がめざすべき方向性を定めたものです。これにもとづいて、構造改革によって実現される精神医療の将来像が公表されました。このような時期に、日精看の理念はできました。理念の実現に向けて、私たちが行わなければならないことは、患者のニーズに応えるよりよい看護を提供することです。一人ひとりの患者が本当に望んでいることをかなえるのは、法律だけではありません。日々の実践のなかに、その答えはあります。患者や家族にとってよりよい精神科看護とは何か?をみなさんと考える場を、来年はもちたいと考えています。
一般社団法人日本精神科看護協会会長
末安 民生
新年にあたり、謹んでごあいさつを申し上げます。
今年、日精看は法人化40周年を迎えます。この40年間で、精神科医療のあり方や精神科看護に求められる期待や役割は大きく変わりました。
2014年は、精神科医療が新たな段階を迎えた年でした。
7月、厚生労働省の「長期入院精神障害者の地域移行に向けた具体的方策に係る検討会」は、「精神医療の将来像」と、将来像を実現するために「精神科病院の構造改革」をまとめ、そのなかで示された具体的方策は、新たに入院する患者は原則1年未満で退院させること、入院期間1年以上の長期入院患者の地域移行をさらに促進することです。これによって、これからの精神科医療で看護者が行うべき役割がより強く明確になりました。日精看は、この目標の実現のためにあらゆることに取り組んでいかなくてはならないと考えています。
精神障がい者に対する社会の偏見が根強く、地域生活支援策がほとんど整備されていない時代、「患者さんは病院のなかにいるからこそ安心した時間を過ごすことができる」という考え方や、地域からの患者を戻さないでほしいという圧力に精神科医療が屈していたときもありました。しかし、その時代にも患者さんの生活の場を確保するために不動産屋に足を運び保証人になり、アルバイトを一緒に探す先輩の看護者がおられました。帰るべき場所のある人はその場所へ、帰るべき場所を失った人には次の生活の場を探そうと粘り強く繰り返し試みていたのも私たち看護者だったのです。
2004年、厚生労働省から改革ビジョンが示され、入院期間の短縮と社会的入院の解消、在宅ケアの充実と同時に「入院期間が1年を超えるものは長期入院である」と明言されてから10年。原則として1年以上の入院を認めないということは、病いを抱えながら生きていく足場をいかに築いていくかということであり、看護者の力量が問われます。入院医療と地域医療、地域生活支援を途切れることなく強力に結びつける技術とかかわりが必要なのです。これは難しい課題ですが、われわれの経験知にプラスする英知を集め、やり遂げたいテーマです。他職種の経験や、なによりも当事者の意見や希望との協働の場を保ちながら進んでいきましょう。
法人化40周年の節目の年、日精看は精神科看護実践能力をより高めながら、先輩、後輩の看護者ともども新たな課題にチャレンジしていきたいと考えています。
一般社団法人日本精神科看護協会会長
末安 民生
私は、昭和53年に日精看に入会しました。当時、勤務していた都立松沢病院には看護職員が500名ほどいました。しかし、30余りの病棟に分散していて、隣の病棟がどんなケアをしているのか分からないので、知りたいと思っていました。松沢病院に13年勤めた後、国会や民間クリニックなどに勤務し、看護教育に携わるようになりました。そして、「精神科看護をもっと深くわかりたい、医療従事者以外の人たちにも伝えたい」という気持ちが強くなっていた平成9年、日精看理事に推薦され、お引き受けしました。
理事になって、それまで知らなかった医療や福祉の課題に取り組みながら、日精看の歴史と全国規模のネットワークがより活用されるには何を行えばよいかを考えるようになりました。と同時に、同僚である看護師がケアにどのような困難を感じているのか、どんなときに喜びを感じるのかを「もっと語り合いたい」という気持ちが強まりました。看護者は患者さん自らが語ることを手助けしますが、看護者も自らの経験を表現し合う必要性を痛感したのです。
「看護を語ること」とは「自らを語ること」です。医療的処置などは言語化したり根拠を示すことは比較的容易ですが、「患者さんの生活をケアする」という精神科看護の真髄を言語化することは難しい。だからこそ、看護者自らがケアを語って深めていきたいのです。それが、看護者の自信につながり、自分の仕事に誇りをもつことが、さらに質の高いケアの実現につながるのではないかと思います。それを支援することが、日精看の職能団体としての存在意義があると考えています。
新法人への移行については、早い段階から協会と支部を一体化して申請することに決めていました。それはとても難しいことでしたが、会員の皆さんの身近にある全国の支部とひとつになって取り組むことこそが未来の日精看に必要だと信じて進んできました。
「日本精神科看護協会」はこれまでと変わらず、精神科で働く仲間たちとのつながりを大切にします。精神科看護者は全国の現場にいます。それぞれの持ち場で語り合うことを通して精神科医療の質を高め、社会に大きく貢献していきましょう。
一般社団法人日本精神科看護協会会長
末安 民生
7月31日、内閣府に一般社団法人(非営利型)の申請を行ないました。政府からの承認には数か月を要しますが、この申請に至るまでの、支部や会員の方々、関係者のみなさまの多大なるご支援やご尽力に、あらためて感謝申し上げます。
今日からまた、新しい一日が始まります。全国の会員のみなさんや精神科の医療や福祉に関心をもつ方々と一緒に、新しい日精看を形づくっていきたいと思います。法人移行申請とともに、今年度の総会でご承認いただいた3カ年の活動方針に基づいた具体的な取り組みもスタートしています。
私たち精神科看護者は、精神障がい者の回復と健康な暮らしに寄与する専門性を発揮し続けるために、社会の変化に合わせて変わっていく必要があります。そのためには、精神科看護者がそれぞれの知見をもち寄り、看護の質を高め合いながら、社会の要請に応えていかねばなりません。これは、日精看が発足した66年前から変わらぬ姿勢です。3カ年の活動方針の大きな目的は、精神科看護者一人ひとりの日々の看護がのびやかに発展していくための基盤づくりです。
さて、5月末に開催された第38回日本精神科看護学術集会(宮城)に参加された方は、すでに新たな気運を感じ取られているかもしれません。精神科病院の日常風景で構成されたスライドショー『365』、業務改善発表会、示説発表の投票企画、アロマ体験会やラン・ナースなど、多彩な学術集会になりました。その結果、学術的な学びだけでなく、看護観を磨く場になりました。静かに振り返ったり、柔らかな情報交換があったり、わくわくするような発見を得られたりするなど、従来の学術集会よりも、さらに豊かな交流が数多く生まれていました。
スライドショーや基調講演のキーワード「365日」は、3カ年の初年度である今年度の日精看のテーマでもあります。会員のみなさんは、「365」のロゴと、それに添えられたキャッチコピー「変えられない一日に寄り添い、変わっていく一日に寄り添う」を、『ナーシング・スター』や学術集会ポスターなどで何度もご覧になっていると思います。これから、患者さんと精神科看護師の日常=「365日」というテーマに沿って、さまざまな交流の機会をつくっていきます。たとえば、『ナーシング・スター』では新連載「精神科看護師の365日」をスタートし、全国から個性豊かな会員さんが登場します。8月31日~9月1日の第20回日本精神科看護学術集会専門Ⅰ(群馬)では「ワールド・カフェ」を企画しています。そこでは、これまでとは違う学びや交流が得られるはずです。みなさんの日々の看護や積極的な取り組みを支援するために、さまざまな場を用意します。
そして、一人ひとりの看護者の声に応えられる事業をさらに推進しながら、同時に、医療や社会における職能団体のミッションを遂行するための活動も加速します。たとえば、来年4月の診療報酬改定に関する報告セミナーもその1つです。現在、会員のみなさんへのヒアリングや調査に基づくデータをもって厚生労働省との交渉を行いながら、日精看としての方向性を社会に提示しています。また、地域における会員の活動をより活性化させるために、支部事務局のさまざまな活動をサポートし、運営上の負担を軽減する支援体制を構築する準備を進めています。
日精看が国や自治体、社会全体に働きかけ、精神科看護の専門性をさらに活かせる環境をつくっていくこと。全国的な組織だからこそ可能な取り組みも、この3カ年でさらに強化していきます。いつの時代も変わらない精神科看護の本質を、時代に応じて変化させながら維持していくために、みなさんとともに、新しい日精看に向かって進んでいきます。
2013年8月
特例社団法人日本精神科看護技術協会 会長 末安 民生
法人移行に向けての動き
現在、理事会では法人移行の方向性について、支部長会議や支部役員会・幹事会への説明、フリーダイヤルによる会員の方々からのお問い合わせなどへの対応を行い、それらを通じていただいたご意見を踏まえて、今後の方向性を検討しているところです。
これまでの日精看の良き伝統は引き継ぎつつ、新しい日精看も会員の総意を受けた組織となり、会員のみなさんが看護者としての誇りをもち、責任を果たしていける組織として社会に認められるようになっていきたいと思っています。
もう1つの可能性-67年目の日精看へ
日精看の活動には歴史があります。
その歴史は時間の経過の中でただ積み重ねられてきたものではなく、その時代ごとの患者さんとのかかわりの中でつくられてきたものです。先輩方は、自分たちの施設だけでなく全国の施設と交流することで、さまざまな試みを知り、時には諸外国の精神障がい者施策や看護方法からも学んできました。良き伝統は引き継ぎつつも、独自の精神科看護を創りだそうとしてきたのです。「自分たちの病院や病棟という枠の中だけにとどまらない看護を展開する」。それが先輩方からいただいた日精看の財産であり、新しいことを試みる礎でした。この考え方に呼応して、全国に支部が生まれて66年の歳月が経過しました。
それは、すでにある組織や人に頼るだけでなく、まず「自分たちを恃む(たのむ)力」を蓄えることでもありました。その結果、会員のみなさんのおかげで、日精看は現在では4万人の会員と、東京と京都、九州に事務所を開設し、研修と交流の機会を提供できるまでになりました。そこで行なわれる日精看の事業の中で、会員施設や個人の個性的な活動や研究に出会うことが、まだまだたくさんあります。しかし同時に、次の課題もあります。
それは、「複雑な現代社会に専門職としてどのように役立っていくのか」という自らの専門性の質を高めることの課題です。そして、当事者の方々の考え方や経験をどのように受け入れていくのか、『専門』職の枠組みを超えた医療や福祉分野の支援者のあり方と、人のつながりをどのようにつくっていくのかという課題もあります。この一見相反する課題の答えを出すことは簡単ではありません。また最近では、精神科病院で起きた暴力事件で看護師が訴追され、私たちは倫理観や業務のあり方をもう一度見直す必要性に迫られています。
私たちは自分たちの力を過信せず、自分たちの実践を絶えず問うことを通して看護者としての感性を磨き、行動の根拠となる感情や知識、経験の質を高めていくことが必要です。そして、全国の精神科病院で起こっている日常のケアの中での困難をひとつひとつ解決していきたいと思っています。
日精看の次の一年、67年目の課題を会員のみなさんと共有し、今回の事態を乗り越えていきたいと思っています。
最後に
日精看は、今後もこれまで通りに会員のみなさんに提案し、相談しながら活動を続けます。
第一に、支部と協会が一体となって、病院と地域とのつながりをつくりながら、精神障がい者への支援活動を行います。第二に、会員のみなさんが研修会や学術集会を通して学び合い、助け合っていくための活動を発展させます。
第三に、各支部で取り組んでいただいているこころの健康出前講座や、学術集会での障がい者アートへの支援などの社会貢献活動を、関係団体とのつながりを深めながら広げていきます。
これらの活動には、会員のみなさんの参加と支部役員の方々のご協力が必要です。理事、役職員も力を尽くしてまいりますので、みなさんの力も貸してください。これからも、よろしくお願いいたします。
平成24年9月18日
特例社団法人日本精神科看護技術協会 会長 末安 民生
謹啓 時下益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。
会員のみなさまには日頃より、支部の活動や協会の研修や出前講座などさまざまな事業にご参加いただき、本当にありがとうございます。
さて、協会は、平成21年から会員、都道府県支部の役員のみなさまと一緒に、公益社団法人への移行をめざして取り組んでまいりました。今日に至るまで、議決権行使による意思表示手続きなど、みなさまのご協力には心より感謝を申し上げます。
本来であれば、6月末日をもって、公益社団法人への移行申請手続きを完了する予定でおりました。そのための最終の確認をしている段階で、この度、一部の支部におきまして、現預金の私的流用という不祥事が発生していたことを確認いたしました。
理事会といたしましては、会員の大切な財産管理体制に不備があり、これまでの事務局体制を反省するとともに管理体制のさらなる適正化の必要性を痛感しております。会員のみなさまの信頼を裏切ることになってしまい、誠に申し訳なく思っております。
また、本件の発生にともない、現時点での公益社団法人への移行はかなり困難な状況になりました。これを受けて、協会は一旦「一般社団法人」への移行を検討することといたします。しかし、将来的には「公益社団法人」への移行も視野に入れております。そのため、協会内に第三者委員を入れた「コンプライアンス委員会」を新たに設置するとともに、会計システムを刷新することといたしました。それによって、組織内の不正行為の防止に努め、社会から信頼される協会となるべく、今後とも取り組んでまいる所存です。
この度は、会員のみなさまにご心配をおかけいたしますが、日精看が現在行なっている学術集会や研修事業をはじめとする事業につきましては、従来通り実施いたします。これまでと同様に最新の医療福祉制度の動向に合わせた研鑽の場をつくってまいります。
管理体制の見直しなど、今後の経過につきましても、随時ご報告させていただきます。
いろいろとご迷惑をおかけして大変申し訳ございませんが、これまで同様、会員のみなさまとともにある「日精看」をめざして取り組んでまいりますので、引き続きご理解とご協力をお願い申し上げます。
謹白
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日 時: | 平成24年4月21日(土) |
出席者: | 末安民生(社団法人日本精神科看護技術協会会長) 仲野 栄(社団法人日本精神科看護技術協会専務理事) 渡辺峯子さん(ひまわり訪問看護ステーション所長) 阿部朋美さん(石巻市医師会附属訪問看護ステーション所長) |
内 容: | ご挨拶と自己紹介 石巻市地域ケア担当者交流会を続ける意味 “支える”や“与える”のではなく、一緒に作っていく 精神科看護技術を伝え、経験によるノウハウを交換できた ケア者である私たち自身のケアする必要性を知った |
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日 時: | 平成24年3月4日(日)10:00~11:30 |
会 場: | 協会会議室 |
出席者: | 末安民生(社団法人日本精神科看護技術協会会長) 大塚恒子(社団法人日本精神科看護技術協会副会長) 龍野浩寿(社団法人日本精神科看護技術協会常務理事) |
内 容: | ご挨拶と自己紹介 東日本大震災での日精看の取り組み 被災地で精神科看護師が貢献できたこと 上記を踏まえて、今後の日精看が取り組む社会貢献を考える |
会員、支部役員の皆さんへ
この度の東日本大震災において、被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。約1か月が経過した今も、亡くなられた多くの方とそのご家族、多くの行方不明者のご家族は、気持ちの休まることのない日々を過ごされていることとお察しし、心からお悔やみを申し上げます。また、災害復興どころか、緊迫した状況が継続している福島原子力発電所周辺の、暮らしを奪われたままの皆さんにもお見舞い申し上げます。
災害に対する備えは個人の力ではあまりに非力であることを思い知ることとなった今回の事態に、息の詰まる毎日を過ごされている会員の皆さんも少なくないと思います。
私ども日精看は、会員の皆さんの協力によって短期間のうちに現地の調査を行い、その後、被災地への政府の看護師ボランティアへの登録、支援物資の集積とお届け、義捐金のお願い、そして人的支援や地域の精神障害福祉サービスのバックアップを展開しております。今年の全国大会の開催地である福岡県をはじめ全国から、被災地の病院へのボランティアに入っていただいております。さらに、臨時理事会を開催して、このような支援をより確かに会員一人一人にお届けする策として、本年度の総会では、被災地域の会員の年会費の免除をご提案いたします。
福岡県支部の会員の皆さんと準備を進めてまいりました福岡大会は、このような困難な時期だからこそ、これを乗り越えていく会員全体の最初の課題を共有する「場」と「時間」として開催をしたいと思っております。
私ども日精看は、320万人を超えるという地域で暮らす精神障がい者と、精神科に入院している32万人余りの患者の暮らしと治療を支える任務を、1日も休まずに担っております。この役割をより質の高いものとし、会員同士が励ましあい支えあう組織にしていくためにも、日々の研鑽の結果である研究発表についても、それを準備してきた方だけでなく、会員相互で称えあい成果を共有したいと思います。
また、被災地での看護活動を担われた会員からの報告や、今後の災害に備えていくためのいくつかの企画を準備いたしました。
どのようなことが起きようとも、障がい者支援は休まずに進めていかなければなりません。会員がお互いの存在を確かめ、知らないことは教えあう、明日に向かって進んでいくための催しである福岡大会にぜひご参加くださるようにお願い申し上げます。
2011年4月
特例社団法人日本精神科看護技術協会 会長 末安 民生